プロジェクト座談会
阪神園芸って
どんな仕事をしているの?
阪神園芸の主たる事業は総合緑化。言うなれば緑化のエキスパートだ。
緑地に関する調査や企画・デザインから施工、維持管理はもちろん、公園施設などの運営管理まで一貫して行っている。
では、実際にはどんな流れで、どんなふうにスタッフが関わりながら進めているのか?
まず、一連の流れを「見える化」してみよう!ということで、とあるプロジェクトに関わったメンバーを一室に緊急招集。
プロジェクトの立ち上げから、クライアントへのお引き渡しまで、ざっくばらんに話してもらいました。
今回集まってもらったのは、大阪府柏原市にある「学校法人 玉手山学園」の短大1号館解体に伴う、跡地の環境整備計画を担当した3人。
プロジェクトで必要な多数の契約を確認・ジャッジする役割。数字関係の確認など、あまり表には出てこないが、重要なセクションを担当
企画・設計・デザイン・営業を担当。クライアントの想いを形にする“最初のステップ”を担う大切な役割。
造園工事を担当。デザイン室からの設計計画書に基づき、安全・適切に工事を行う阪神園芸の土台的な役割。
まず、どんなプロジェクトだったのですか?
松本
「学校法人 玉手山学園」さんは、以前から植栽剪定等を年に数回、当社で担当させていただいていたんです。この学園は、関西福祉科学大学・関西女子短期大学・関西福祉科学大学高等学校・認定こども園 関西女子短期大学附属幼稚園が一つの敷地内にあって。今回のプロジェクトは短大の校舎の解体に伴う空きスペースの改修工事のコンペでした。企画・設計・デザインから造園工事までを担当させていただいています。
植栽剪定等を含め、これまでずっと営業し続けてきたクライアントさんだったので、今回コンペ4社中で特定されて、これまでの積み重ねが実ったな…と。
どんな風に企画・設計をされていったのですか?
松本
玉手山学園の教職員の方や学生さんで構成されたワーキングチームからの設計条件、いわゆる「こんな広場にしたい!」という希望を教えてもらったのがスタートでした。そこからコンペ資料を作成していったのですが、同じデザイン室の作間顧問と話し合ったり、工事予算内でプランが成り立つかを造園本部の経験者と確認・検証したりして詰めていきました。 クライアントさんとしては、予算の中でより良いものを出してほしい!との想いもあるので、限られた予算内で希望を漏れなく表現していくかは、かなり気を使いましたね。
実際にどんな提案をされたのですか?
松本
学園正門から入ってすぐのエリアだったため、①学園の顔になるようなシンボル空間にしたい、そして ②幼稚園から大学までさまざまな年齢層が集まる空間にしたい、そして③地域に開かれた学園を象徴する場所にしたい、皆さんからヒアリングしたこの3つの想いをデザインに落とし込みました。例えば、広場はイベントなども開催できる多様性のあるつくりにしたり、元々あった川沿いの桜並木は地域の方々にも楽しんでいただけるよう延伸(エリアを拡張)させたり。並木横には幼稚園から大学まで、さまざまな学生さんたちが、個々で楽しめるテーブルやベンチを置くなど、憩いのスポットづくりを意識しました。
提案時に驚かれたのは人工芝を提案したことでしょうか。阪神園芸といえば天然芝のイメージがあると思いますが、天然芝は小まめなメンテナンスが必要不可欠。学園側での維持管理の負担を考えると、人工芝にした方が良いとお話ししたところ、かなり驚いてらっしゃいました。
企画の中で苦労した点はありますか?
松本
毎回、産みの苦しみはありますが…(笑)。
コンペ特定後のワーキングチームとの打ち合わせがなかなかできなかったことですかね。
2019年末にコンペで特定いただいたのですが、ちょうどその後すぐに新型コロナウイルス感染症患者が日本で見つかって。緊急事態宣言が発令されたタイミングだったこともあり、ワーキングチームの会議が延期されたり、集まれても少人数だったり…。工事の時間は決まっていたので。そこは少しだけ焦りましたね。
荒田さんはその中で契約関係を担当されたんですよね?
荒田
はい、学園さんとの契約のやりとりや予算書類の確認を主に担当していました。
「今回のコンペは負けたくない!」と思っていたので、数字の調整にはかなり力を入れました。クライアントさんの希望と予算、実際にかかる費用などを細かくチェックして、「どうすればより良い提案ができるか」を最後まで諦めずに細かく設定していきました。書類のチェックと契約まで終わったら、あとは松本さんと梅田くんにバトンタッチです。二人に比べたら、関わったのはほんの少しですよ!(笑)
梅田
いやいや、そのチェックと確認が大変なんですから…。全然ちょっとではないです(苦笑)。
実際に施工・工事に入って注意していたことはありますか?
梅田
そうですね。冬休みも一部かぶっていたのですが、基本的に学生さんが在校されている期間の工事だったことでしょうか。期間中、どうしても工事車両を学園の敷地に入れないといけないので、安全管理にはかなり気を使いました。規模の大きい工事でしたし、学生さんたちが工事現場の前を行き来することもあり、より身が引き締まりましたね。
松本
あとは、他社で解体作業後、更地で引き渡しいただいたのですが、一部同時並行で行うこともあり、工程管理はかなり気を使ったんじゃないかな…?あとは、既に建っている校舎との調整とか。特に高さは現場で合わせていかないといけないので。梅田くんたち造園本部の方で、事前調査や測量をしっかりしてもらった上で、僕たち設計が最終の高さを出したので。そこら辺も大変だったんじゃないかなと思います。
梅田
そうですね。すでに建っている校舎に高さを合わせつつ、排水の流れもつくらなくてはならないので、そこは苦労しました。角度などの収まりがうまくいかない部分は、松本さんに随時相談していましたね。すぐに答えてくださるので、とても助かりました。当時はちょっと鬱陶しがられるくらい連絡してたんじゃないかな…(苦笑)。
松本
え、逆に「全然聞いてこ〜へんな」って思ってたで(笑)。
梅田
ならよかったです(笑)。
実際に学生さんが入られてからの様子はご覧になりましたか?
松本
オリーブのシンボルツリーがある広場の中心にテーブルセットやベンチを置いているのですが、そこで学生さんが談笑されていたり、人工芝の広場でお子さんが遊んでいたり、企画時に想い描いた通りにご利用いただいています。加えて、吹奏楽などのイベントを広場で開催されたりなど、広場をうまく活用してくださっていて、頑張ってつくった甲斐があったな〜と感じますね。
梅田
僕も同じですね。苦労して設置したベンチを学生さんが使ってくれている様子を見て達成感を感じました。やっぱり実際使ってくださっているところを見るとやりがいを感じますね。